「今回の目玉商品はこちら! “空気清浄機” もちろん、ただの空気清浄機ではありません!」
「なんと、史上初! “空気を読める”清浄機なのです!」
テレビの中のMCがまるでマシンガンのように喋りだしたかと思うとここが佳境だと言いたげな表情で目をカッと見開いた。
「エッチな雰囲気になると性的興奮を高める香りを放出し、いまいち盛り上がりの欠ける場面では気持ちの高揚する香りを放出します」
「性的興奮ッ! ウォオオオ! たまらん! あぁっ、たまらん! (…………ウッ!)
「さらには別れ話が切り出しやすくなる香りや、オナラをしてしまった時に臭いを瞬時に消す機能などが搭載されています」
「オナラの臭いを消せるなんて最ッ高じゃないかッッッ!」 (ブバッ、ブボボボッ!)
「でもぉ、お高いんでしょ?」
「様々な機能が搭載された、空気清浄機! な、なんと! 今なら9999円! 売り切れ必至……いますぐお電話を!」
録画していた通信販売のDVDを俺は一時停止した。
「買った! これは間違いなく買った!」
俺の名前は和井田 慶(わいだ けい)。名前と苗字を逆にして、けいわいだ(KYだ)なんて呼ばれるのは今日で最後にするんだ。
「俺はこれで空気を読めなくてもいいんだ! もう空気を読めなんて言われなくてもいいんだ! さぁ電話をするぞ!」
「えっと……0120の――」
「プルルル………… はい。ニューゲートたかたです」
「あ、あの、空気を読めるっていう空気清浄機が欲し――」
「受付時間は終了しています。 空気を読んでください」
終わり。