“妹とSFモノ。第五話”

ーーわたしは、お兄ちゃんたちにすべてを話す決心をしましたーー

ーーたとえ消してしまう記憶とわかっていても、みんなと一緒にいた時間はそこに残ると思ったからーー

ーーわたし自身が、みんなのところに居たという記憶を残したかったからーー

皆さんにお話したいことがあります。

なんだよ? かしこまって。

悩みごとかな?

なあに?

これからお話することは、すべて真実です。だから、なにも言わずに聞いてください。

わたしは、この太陽系から遠くはなれた 宇宙にある「銀河連邦」の人間です。

はあっ!? なに言ってんだよ!

お願い! 聞いて!

わたしたちの目的。それは、宇宙に存在する知的生命の生態の調査をすることです。

その調査対象に、この惑星、地球が選ばれました。

わたしは、今回の任務に選ばれた調査員です。

わたしの本当の名前は、ナンバー773。

この地球に潜入し、地球人を調査するために来たのです。

潜入調査をやりやすくするため、皆さんの……

皆さんの記憶を改変しました。

だから……わたしは……

皆さんの娘でもないし、妹でもないんです!

家族ではないんです!

皆さんを騙していたんです!

ごめんなさい……。わたし、地球人がこんなにいい人たちだなんて、知らなかった!!

皆さんの記憶改変をすることが、こんなにいけないことだなんて、わからなかった!!

ごめんなさい!!

そして、この地球の調査も、もう終わりです。

わたしは、宇宙に待機している調査船団に帰らなければなりません。

なに……言ってんだよ。

安心してください。皆さんのなかにある、私の記憶はすべて……

すべて、この「記憶消去マシン」で消し去ります。

だから、皆さんは、わたしが来る前の記憶に戻ります。

だから……

わたしのこと、ぜーんぶ忘れちゃっていいんです!

ふざ……けんなよ……。

忘れることなんてできるわけないだろ!

ナナミ……。

ナナミちゃん……。

皆さん、親切にしてくれてありがとう。

わたしはっ! お兄ちゃん、お父さん、お母さんのこと、ぜったい忘れないからっ!!

「記憶消去マシン」起動!!

え……。

ん……。

?……。

お父さん、パソコンの操作、うまくなってね。

お母さん、カレーすごくおいしかった。アイドルの応援続けてね。

お兄ちゃん……、仲良くしてくれてうれしかった。彼女作らなきゃダメだよ。

わたしには、家族も兄弟もいないからわからないけど、ここでの生活は楽しいことばかりだったよ。

ありがとう。そして、

さようなら。

さようなら!! わたしの大切な、やさしい地球の人たち!!

ーーこうしてわたしは、地球での任務を終わらせ、調査船団へ帰ったのですーー

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Posted at 2012/10/21 22:58 Viewed 12 times

From Author

第五話です。ここまでお付き合いしてくれてありがとうございます。実はちょっと悩んでいます。この回で終わらせるか、それとも六話(最終話)で完結させるかです。つまり、この回の最後で”鬱モノ”として終わらせるか、それとも六話で、救いのあるオチを付け、ハッピーエンドにするかです。少し考えさせてください……。

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