「司法試験に受かって早5年。下積み時代を重ねてやっと自分の事務所を持つことができた」
「……まぁ、上の階がソー〇ランドっていうのがかなり気になるけど」
「ていうか『ぬるぬるウーロンチャ♡』ってどんな名前だよ……。センス悪すぎだろ……」
「そういえばもうそろそろ無料相談のお客様が来る頃だな」
「……いくらなんでもこんなところに来てるなんて人にバレたらマズイよな……。とはいえ、気合入れてチャラ目の変装までして来ちゃったけど逆に浮いてるような気がするなコレ……」
「まぁ、いいや。……なんて独り言言ってたら着いた。ココがソープ〇ンド『ぬるぬるウーロンチャ♡』か!」
「すみませーん」
「あ、来た! はーい」
ガチャ
「……あ、どーも」
「お待ちしておりました。どーぞお入りください」
「あ、ありがとうございます……」
「こういったところをご利用されるのは初めてですか?」
「あ、はい……。初体験です。……いろんな意味で」
「? そうですか。本日はありがとうございます」
「……えっと、ここの方ですか?」
「ええ、そうですよ」
「じゃ、じゃあここに住まわれてるんですか!?」 ※かなりテンパった様子
「いや! ここに住んでるわけではないですよ!?(汗」
「……一応、葛飾にある実家で暮らしてます」(何で初対面の人にこんなこと話さなきゃいけないんだろう……)
「え、葛飾!? え、どこどこ!? どこ中? どこ中?」
(なんか急に馴れ馴れしくなったな……)「中学は第一中(仮)ですね」
「第一中(仮)か~……。知らないな~……」
「えっと、ではお客様はどちらの中学校ご出身なんですか?」
「安孫子中」
「それ千葉県ですね。もはや『県』が違います」
「何言ってるんですか~。東京は『県』じゃなくて『都』でしょ~? しっかりしてくださいよ、東京『都』葛飾区民!」
(……鬱陶しいなこの人)
「で、ここではアルバイトかなんかですか?」
「いやいや! ちゃんと試験も合格して、正式にここで働いてますよ」
「え!? 試験とかあるんですか!?」
「え? えぇ、もちろん……」
「そんなさも当然のように……。知らなかった~……」
「? そうですか?」
「ええ……。ちなみに合格率ってどれくらいなんですか?」
「そうですね。毎年3%くらいでしたよ確か」
「めっちゃ難関じゃないですか!? スゴイですね!!」
「いえいえ、それ程でも」
「じゃあもう、もはや『先生』ですね! よっ! 『先生』!」
「ええ、まぁ、おかげさまで多くのお客様にそう呼んで頂いたりもしまして……」
「ほぉ~。では相当な『テクニック』の方もお持ちってことで?」
「いえ、まだまだですよ。そちらの方はこれからどんどん身に着けていこうと思っています」
「何言ってるんですか! そんな難関試験突破しておいて!」
「いえいえホントそんな……」
「またまた~。ご謙遜を~」
「いえ、ホントに……」
・・・・・・・・・・・・・・・
「それでそろそろ本題の方に入ろうと思うのですが」
「あ……。はい!」
「えっと、本日は『社債』についてのご相談ということでよろしかったでしょうか?」
「『射精』についての相談!?」
「ええ、『整理中』ということで」
「いやいやいやいや!! 何かあっても困るんで、できれば安全な娘で……」
「? はぁ……」
「え? ていうか、ここってそういうのも大丈夫なんですか?」
「はい! ウチはいろんな分野を幅広く扱うというのがモットーなんですよ!」
「いや、いろんな分野っていうか法律的にちょっと問題が……」
「今は一緒に刑事事件も扱ったりしてるんですよ」
「ダメじゃないですか!」
「……え? ダメですか? まぁ、確かに手広くやりすぎだってよく言われるんですけど……」
「いや、そういう問題じゃ……」
「……まぁ、あまり気にしないことにします。……それより、もうそろそろ女の子の紹介の方を……」
「え!? 私ではご不満ですか!?」
「当たり前じゃないですか!!」
「いや、私、頑張りますよ! 精一杯手を尽くして何とかお客様の『社債』の方を――」
「やめてくださいよ『手を尽くす』とか『精』いっぱいとか! 僕にそんな趣味ないですから!!」
「……そうですか。では、代わりといってはなんですが、私の師匠をご紹介したいと思います」
「え?」
「私の師匠、すごく腕が良いんですよ! ……残念ながらご希望の女性ではないんですけど――」
「じゃあ嫌ですよ!!」
「いや、ホントに腕が良いんですって! たちどころに解決してくれますから!!」
「だから嫌ですって! 腕が良いとか止めてくださいよ!!」
「いや! 本当に!」
「え? ちょ! 何でこっち来るの!!」
「師匠なら絶対大丈夫ですから!!」
「だから僕にはホントそんな趣味――マジでこっち来ないでー!!!」
「絶対大丈夫ですから! 絶対うまく行きますから!」
「うまく『イ』くとかマジで止めて! 上手くないから! さっきから何にも、全然、上手くないから!!」
「いや、師匠ほど上手(うわて)の人も滅多にいません! 必ずお客様のお役に立てますから!!」
「『勃』てないから! 絶対に『勃』てないから!! ホントに僕そういう人じゃないですから!!!」
「誰か助けてー!!!」
「……あのー。今日、無料法律相談を予約した者なんですが……」
「「え?」」