プルルルル……プルルルル……。
(電話がなっている!)
(えっと……発信元は……。)
(また知らない番号からだ……。)
(どうしよう。お母さんは無視してもいいって言っていたけれど……。)
プルルルル……プルルルル……。
どうしよう……。やっぱり気になる。
ええい!出ちゃえ!!
もしもし……。
もしもし、そちらは藤井先生の御宅で御座いますか?
(今度は、結構歳を取った年配のおばさんみたい。でも、どっちのだろう?)
はい、そうです。
わたくし、K大医学部附属病院外科医長、準教を務めて居ります森谷保の家内で御座いますが……、
藤井先生の奥様は御在宅されておいででしょうか?
(何だ、お父さんの方か……。)
(あ!でも森谷先生って、確かお父さんより立場が偉い人だよね……。その人の奥さんって事は……。)
(ここで雛子が失礼な事を言ったりしたら……。)
(お父さん、ピンチ!)
申し訳ありません。
今は父も母も用事で家を空けていて、居ません。
あら……。そうですか……。なら、お帰りになるのは何時頃になるかしら?
すみません。わたしにもわかりません。 (雛子、封印!)
多分、夕方遅くになると思います。
あら、そう…………。
あ、あの!宜しければ、わたしが御用件を承って、両親に伝えますが……。
いえいえ、そこまで急ぎの用事ではありませんわ。でも……、
お嬢さんの御厚意に甘えさせて頂こうかしら……。
お父様か、お母様に……。先日は結構な品を贈呈して頂き有難う御座います。
美味しく頂戴致しました……。……とお伝えして貰えないかしら。
はい。確かに伝えておきます。
ありがとう。……お嬢さん、何年生なの?
えっ……。
今、小学3年生です。
あら~~、そうなの――!
まだ小さいのに、こんなしっかりとした受け答えができるのね。
お父様とお母様の育て方が大変宜しいのねえ。良く判るわ。
では、それではおばさんはここで失礼致しましょうか。ご両親に伝えておいて下さいね……。
(ガチャリ……ツ――ツ――ツ――――。)
えっと……。何だかよく解らないけれど……。
褒めて貰ったって事は、雛子の態度は良かったって事なのかな?
伝言はお母さんが帰って来た後でもいいよね、うん!